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東京ワーキングマザーログ

「ハンドメイズテイル」の現実性

まだ9月も半ばだけれど、今年見た海外ドラマの私的ベストは『ハンドメイズテイル』だとすでに決めている。原作から飛躍しつつも原作を損なわない稀有なドラマで、それだけでも評価に値するのに、このタイミングでドラマ化した製作者たちの狡賢さときたら!こういう不穏なストーリーは幾分かの現実性があってこそ面白いというのをよく分かってる。さすがアメリカンエンターテイメント。

話の舞台は、環境汚染が進んで不妊が蔓延した近未来。アメリカはキリスト教原理主義者たちによるクーデターで崩壊し、ギレアドと言う名のキリスト教原理主義国家が樹立した。そこでは「キリスト教」の名の下に圧制が敷かれ、女性はあらゆる権利を剥奪され、数少ない生殖能力のある女性は「ハンドメイド」として教育・管理され、支配階級の上官たちの家に送り込まれ、不妊の妻の代わりに子供を妊娠して出産することを強いられてる… という、いわゆる「ディストピア」もの。

だけど怖いのは、近未来と言いつつも舞台設定が完全に現代で、「テロ対策にための新しい法律と言われて傍観していたらいつのまにかクーデターが起きていた」という状況。この、明日にでも世界のどこかで起こりえそうなプロットが、なんとも言えず恐ろしい。政治を政治家任せにして、政治家が作り出す法律にも方向性にも無頓着なのは、秩序があって平和な国にこそありがちだよね。というか私自身がまさにそう。

話の中で、ハンドメイドの教育係が「自由には「freedom to」と「freedom from」の二種類がある。今のあなたたちには「freedom from」を与えられていることをよく弁えなさい」というようなことをハンドメイドたちに言うシーンがある。シンプルだけど恐ろしいくらいに的確な表現で、ひどく印象に残っている。「自由」すら、ただもう解釈の問題として押し付けられる。ふと油断した一歩先に待っている未来がもしこれだとしたら…

ホラーとは違う意味で背筋が凍る、Huluオリジナルの「ハンドメイズテイル」。現在、シーズン2が1話ごとに週次で配信中なので、ご興味のある方はぜひ。