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東京ワーキングマザーログ

「Sharp Objects」ー ほんとうに痛いのは心か体か。

普段スリラーはあまり読まないけど、アメリカの友達がFacebookでTVドラマ版を絶賛していたので、気になって読んでみた。タイミングよくKindleでたったのUSD 1.17だったし。(Kindleの価格設定は大体おかしい。)

さて。日本ではなぜか「KIZU ー傷ー」という、ひと昔前のヤクザ映画みたいなタイトルにされてるけど、原題は「Sharp Objects」。

過去のトラウマと自傷癖を抱えて酒浸り気味のレポーター、Camille(アラサー独身)は、生まれ育ったミズーリの田舎町、Wind Gapで起きた連続少女殺人事件の取材を命じられる。仕事のためと渋々帰った町で、Camilleは事件の真相を追ううちに、自らの過去、母親との確執、家族関係の闇と対峙することになり、やがて事件の真相とともに恐るべき過去の真実が明るみになっていくー ざっというとこんな話。

とにかく終始ダーク。すべて主人公のCamilleの一人称で語られ、冒頭のシカゴの時点ですでに不穏な状態な彼女のメンタルが、故郷のWind Gapの町で痛ましい過去の記憶が呼び起こされたことで、さらに危険な水準へと追い詰められていく。彼女と同じように家族関係で苦しめられ、自暴自棄な衝動を経験したことのあるひとなら、途中で投げ出したくなるかも。(私は健康メンタルすぎて、主人公の言動に若干イラついちゃう方だけど…笑。)

この話に出てくるWind Gapという町は、ミズーリにありながらいわゆる「アメリカ南部」的な小さな町という設定。これがまたさらに独特のを与えている。富裕層と貧困層が存在し、表面的には友好的だけどよそ者には排他的なコミュニティ。だれもが退屈し、だれもが秘密を抱え、他人の不幸と噂話にはすぐに飛びつく。それぞれがその役割を正しく演じているときには、表向きはみな正常に機能して見えるけれど、その裏は…。怖いよね、こういう町。

ストーリーとしては、真実が明らかになるところにカタルシスがあり、とにかく展開と語り口が上手いので、あっという間に最後まで読まされてしまう。スリラーとして、サスペンスとして、なかなか面白い。しかし、Camilleのように病んだ心は、事件が解決するように簡単には片付かないわけで。その読後感を、どう捉えるか。そこで、感想が分かれるのかも。

と言いつつドラマも楽しみ。
早く来るといいなー。