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東京ワーキングマザーログ

「The Marvelous Mrs. Maisel S1/S2」ー 華やかで不自由な時代とコメディ

1950年代、アメリカがもっとも豊かでパワフルだった時代のニューヨークが舞台コメディドラマ。華やかなライフスタイルやファッションの陰にある女性たちの人生の不自由さを描きつつも、あくまでもエンターテイメント路線なのが潔い。

1958年。アッパーミドルクラスのユダヤ人家庭の主婦、26歳のミッジことミリアム・メイゼルは、アッパーウエストサイドで夫ジョールと二人の幼い子供とともに幸せに暮らしていた。

会社勤めをしながらも、コメディアンになる夢を諦めきれず、夜には場末のコメディクラブでステージに立つジョール。ミッジはそんな夫を妻として健気に支えるが、自分の才能の無さに苛立ったジョールは秘書と浮気をして家を出て行ってしまう。自暴自棄になったミッジは泥酔してコメディクラブのステージに上がり、自分の惨状をコミカルにぶちまけて大喝采を浴びる。そして自分の才能に気づいたミッジは、新しい生き方を模索し始めるー

二児の母親という設定が嘘なんじゃないかってくらい子供と関わるシーンが少ないけど、これは働く母親とか女性のキャリアとかではなく、「ミッジ」という女性を楽しむドラマ。裕福な家庭の娘は経済力のある夫を捕まえて優雅な専業主婦ライフ(メイド&ベビーシッター付き)を送るのが理想と刷り込まれていた時代に、夫に棄てられたミッジはアイデンティティと自分の世界の崩壊を経験するわけだけど、そこからステレオタイプな専業主婦の殻を破ってスタンダップコメディの世界でキャリアを追い求めるところがテンポよく描かれている。ミッジはとにかく面白くて可愛くてパワフルでチャーミング。貧乏暮らしで女らしさゼロのマネジャー、スージーとの対照的だけど息の合ったコンビネーションが絶妙だったり、ミッジを取り巻く他の面々もなかなかのキャラクター揃いだったり、設定が濃くて豊かで面白い。役者もすごく良い。

しかしアメリカの50年代ってすごい時代だったのね。ライフスタイルとか社会的価値観とか、現代を生きる身からすると衝撃すぎてファンタジーのレベル。例えば、化粧したまま夫と一緒にベッドに入って、夫が寝たら起きてスキンケアして、朝は夫より先に起きて化粧をしてまたベッドに戻り、夫に起こされたふりをするとか、「素敵な奥様」がもはやライフワークというかアートというか。不平不満なく笑顔でこなしているあれこれが、私からしたら本当にありえない。また一方で、ミッジが舞台で「妊娠」をネタにしようとしたら「妊娠」は舞台では禁止だと降ろされたり、なんだかんだで女性という性への風あたりの強さというかタブー感もあったり。戦後っていうだけでさほど遠くない気がしてたけど、 1958年ってもう約60年前なんだもんね。客観的には興味深いし面白いんだけど、いまの私が生きていくのには不自由極まりなさそう。

あ、でも、ミッジや他の女性たちの50年代ファッションがはすごく可愛くてすごく素敵、というか私好みで、それを見ているのも楽しかった!50年代ファッションがリバイバルしたらいいのになー。(あ、その前にダイエット…笑)